そろばんは右脳トレーニング?脳の研究で分かっていること
「そろばんは右脳を鍛える」と聞いて気になっている方へ。本当のところを研究から。
「右脳」だけではない。脳画像の研究(Hanakawa ほか、NeuroImage、2003)では、珠算式暗算の熟達者は暗算のとき左右両側の頭頂葉・前頭葉(視空間をあつかう場所)を使い、ふつうの人が計算に使う左の言葉の領域はあまり使わなかった。「右脳トレーニング」はこの「言葉ではなく像で計算する」ことを分かりやすく言いかえたもので、右半分だけが育つわけではない。
「右脳」と言われる理由
そろばんを続けた子は、頭の中に珠の像を思いうかべて計算する(珠算式暗算)。このとき脳は数を「言葉(さんたすよん)」ではなく「形(珠の並び)」であつかう。形や空間をあつかう働きは右脳が得意と昔から言われてきたので、「そろばん=右脳」と広まった。
脳画像の研究で分かったこと
- 両側の頭頂葉・前頭葉が働く。熟達者 6人とふつうの人の脳を fMRI で比べた研究では、暗算のとき熟達者は両側の上頭頂小葉・前頭葉が強く働き、ふつうの人が使う言葉に関わる領域の働きは小さかった(Hanakawa ほか、2003)。
- 子どもでも前頭・頭頂の使い方が変わる。約2年そろばん式暗算を習った中国の小学生は、実行機能の課題で前頭・頭頂の領域をより効率よく使っていた(Wang ほか、Human Brain Mapping、2017)。
- 白質(神経の通り道)の変化。長く続けた子どもで、前頭・頭頂をつなぐ白質のまとまりが良いという報告がある(Hu ほか、Human Brain Mapping、2011)。
- まとめ。 2020年の総説(Wang、Frontiers in Neuroscience)は、そろばん訓練が前頭・頭頂の神経の変化をともなって計算・ワーキングメモリ・実行機能を高める可能性があるとまとめている。
言えること・言えないこと
| 言える | 言えない |
|---|---|
| 計算を「言葉」ではなく「像」でするようになる | 右脳だけが大きくなる・右脳の性格になる |
| 計算の速さ・正確さ・数の記憶が伸びる(効果の研究) | IQ・創造性・学校の成績全体が上がる |
| 続けた子で前頭・頭頂の使い方が変わる | 数か月で脳が変わる(研究は 1〜3年続けた群) |
「右脳教育」として売られる教材の中には、そろばんと関係のないもの(フラッシュカード・速読など)も多い。そろばんの効果として研究で確かめられているのは、上の表の左側だけ。
像で計算できるようになるまで
珠の像は、本物のそろばんで珠を動かす経験がたまってからできる。目安は毎日 10分で半年〜1年、週1回の教室だけなら 1〜2年(暗算ができるしくみ)。途中でやめると像は消えるので、「右脳」のためというより「続く形」で始めることが大事。そろばんキングダムは級を細かく刻み、まちがえた珠の動きを図で見せ、翌日の練習をまちがいから組むので、像ができるまで続ける助けになる。
よくある質問
右脳教育の教室とそろばん教室、どちらがいいですか?
目的で決める。計算と数の記憶ならそろばん。研究で効果が確かめられているのはそろばんの方で、「右脳教育」全般の効果は証拠が弱い。
左利きでも同じ効果がありますか?
ある。脳画像の研究は両側の働きを見ていて、利き手で分けた研究はないが、利き手で効果が変わる理由もない。
大人でも像で計算できるようになりますか?
なる。ただし子どもより時間がかかる。大人は筆算の習慣が強く、像より先に数字が浮かぶ。大人・シニアのそろばんにまとめた。
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