そろばんで集中力はつく?研究と家での見え方
「うちの子、落ち着きがなくて…」そろばんで集中力がつくのか、研究と教室の実感の両方から。
つく、と言える研究が 1つある。スペインの 7〜11歳の子ども 65人を無作為に 2つに分けた研究(León ほか、2021)では、8週間そろばんを使った群が、集中力の検査(d2)・記憶・ちがいを見分ける力で対照群を上回った。中国の研究(Wang ほか、PLOS ONE、2015)では、約2年のそろばん式暗算で課題を切りかえる速さが上がった。ただし研究はまだ少なく、効果が出るのは「毎日短く、まちがいを直しながら」続けたときだけ。
研究で分かっていること
- 集中力の検査が伸びた(無作為比較試験)。スペインの小学生 65人(平均 8.5歳)を無作為に分け、31人が 8週間そろばんを使った。使った群は d2 テスト(決められた記号だけを速く正確に見つける検査)、記憶、ちがいの見分け、創造性の検査で対照群を上回った(León、Carcelén Fraile、García-Martínez、2021)。
- 課題の切りかえが速くなった。中国の小学生 70人を入学時に 2つに分け、31人に週2時間そろばん式暗算を約26か月教えた研究(Wang ほか、PLOS ONE、2015)では、計算力と空間の算数の力に加え、2つの課題を切りかえる速さが上がった。切りかえにかかる「余分な時間」そのものは変わらなかった。
- 脳の前頭・頭頂が効率よく働く。そろばん式暗算を長く続けた子どもは、実行機能の課題で前頭・頭頂の領域をより効率よく使っていた(Wang ほか、Human Brain Mapping、2017)。
- まとめの論文。 2020年の総説(Wang、Frontiers in Neuroscience)は、そろばん訓練が計算・ワーキングメモリ・実行機能(注意の切りかえをふくむ)を高める可能性を示しているとまとめている。
研究で言えないこと
- ADHD など診断のある子の症状が良くなるとは言えない。上の研究はふつうの学級の子ども。
- そろばん以外の場面(宿題・授業)でも集中が続くは、親と先生の実感が多いが、研究の裏づけは弱い。
- 数週間でつくとは言えない。スペインの研究は 8週間毎日近く使った。週1回では足りない。
なぜそろばんで集中が育つのか(しくみ)
そろばんの 1問は「数を聞く/見る → 珠を動かす → 次の数」のくり返しで、途中で気がそれると答えが合わない。つまり集中が切れたことが自分で分かる。これがドリルとちがう点で、ドリルは途中でぼんやりしても最後まで書けてしまう。もう 1つは時間が短いこと。1問 10秒、10問で 2分。幼児でも「2分だけ集中する」ならできる。それを毎日くり返すと、集中できる長さが 5分 → 10分 → 20分と伸びる。教室の先生がいちばんよく言う変化はこれ(効果の研究と実感)。
家で集中力を育てる使い方
| やること | 理由 |
|---|---|
| 1回 5分・毎日 | 長い 1回より短い毎日。集中の「長さ」は回数で伸びる |
| 時間を計る | 「2分で 10問」が見えると気がそれない。フラッシュ暗算は数秒ごとに数が変わるので、見ていないと解けない |
| まちがいをその場で直す | 「どこで集中が切れたか」が図で分かる。そろばんキングダムはまちがえた珠の動きを答えから推定して図で見せる |
| 同じ時刻にやる | 朝ごはんの前・寝る前など。「やるかどうか」を毎回決めない |
よくある質問
落ち着きのない子でもできますか?
できる。むしろ 1問が短いので向いている。1回 2〜3分から始め、できたら伸ばす。座っていられない日はやらない。
何か月で集中力の変化が分かりますか?
スペインの研究は 8週間。教室の実感では、毎日 5分を 2〜3か月続けたころに「座っていられる時間が伸びた」と言う親が多い。
フラッシュ暗算は集中力にいいですか?
数が数秒ごとに出ては消えるので、見ていないと解けない。「見ている」練習としては向く。ただし珠の像がないうちは当てずっぽうになるので、まずそろばんで 10級くらいまで進めてから。
大人の集中力にも効きますか?
大人・シニアの研究は別にまとめた(大人・シニアのそろばん)。中高年 20人の 6か月の研究で、注意の切りかえの検査が伸びた報告がある。
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