そろばんで暗算ができるようになるしくみ(珠の像)
「そろばんの子はなぜ頭の中で計算できるの?」の答えです。
目をとじてもそろばんが見えていて、その上で珠をはじく ——これがそろばん式の暗算。だから数を言葉ではなく「形」であつかう。脳の画像研究では、熟達者は暗算のとき言葉の領域ではなく視空間の領域(頭頂葉)を使う。この「珠の像」ができるまでに、実物のそろばんで半年〜1年。そのあと桁が増えていく。
ふつうの暗算と何がちがうか
ふつうの暗算は筆算を頭の中でする。「7 たす 8 は 15、1 くり上がって……」と言葉で進むので、桁が増えると覚えておけなくなる。珠算式暗算は珠の位置を見て動かすだけで、言葉を使わない。だから 3けた × 10口のような計算でも途中を覚える必要がない。
3つの段階
- 実物で指が自動になる。 5の友(2 を足すときに 5 を入れて 3 を取る)、10の友(くり上がり・くり下がり)を考えずに指が動くまで。ここがいちばん長く、半年〜1年。
- 珠を見るだけで計算する。実物のそろばんを置いて、指を動かさずに目で珠を動かす。まだ実物が手元にある安心感がある。
- 見ないで計算する。頭の中のそろばんだけ。最初は 1けた 2口から。フラッシュ暗算(数字が短く出て消える練習)はこの段階の練習。
研究が示していること
- 熟達者が暗算するときは両側の前頭葉・頭頂葉(視空間をあつかう場所)が働き、ふつうの人が使う言葉の領域はあまり使われない(Hanakawa ほか、NeuroImage、2003)。
- 珠算式暗算の名人は数字の列を覚える力がふつうの人の約2倍。ただし文字の列では変わらない。数字を「珠の形」で覚えている証拠(Hatano と Osawa、Cognition、1983)。
- 5〜7歳で 3年間習った子どもの無作為比較試験では、空間のワーキングメモリが高い子ほど暗算の効果が大きかった(Barner ほか、2016)。
像がくずれるとき
- 5の友・10の友が自動になっていない。頭の中で珠を動かす途中で「あれ、5 を入れて何を取るんだっけ」と言葉が入ると、像が消える。実物で指が迷わなくなるまで戻す。
- 桁を一気に増やす。 2けたができた翌週に 4けたに行くと像が持たない。1けたずつ、口数も 1つずつ。
- 速さを先に求める。正解率 8割を切ったら、速さではなく像がくずれている。ゆっくりに戻す。
家でできること
- 実物で正確に解けることを先に(速さは後)。
- 珠を見るだけで解く日を週に 1〜2回入れる。
- 見ないで解くときは 1けた 2口から。フラッシュ暗算も 1けた 2口・ゆっくりから。
- まちがえたら「どの珠で止まったか」を見る。答えの ○× だけでは像のどこが崩れたか分からない。答えから考えられる珠のまちがいを図で出す道具(そろばんキングダムなど)は、ここで手がかりになる。
良いそろばん学習の条件は「まちがい方が見えること」と「級の段階が細かいこと」。珠の像は、その 2つがあって初めて崩れずに育つ。
よくある質問
学校の筆算と混ざりませんか?
入門のうちは混ざることがある。とくにくり上がりを筆算で考えてしまう子は、そろばんの 10の友が自動になるまで実物を使う。像ができたあとは、学校の筆算は筆算、暗算は珠、と自然に分かれる。
暗算ができるようになるまで何年かかりますか?
1けた〜2けたの暗算は半年〜1年。3けたの見取暗算は 2〜3年。毎日 10分の家の練習があるかどうかで、この期間は 2倍ちがう。
大人でも珠の像はできますか?
できる。ただし子どもより時間がかかることが多い。大人は筆算の習慣が強く、言葉で計算しようとするため。実物で指を自動にする段階を飛ばさないことが大事。
🧮 じっさいにやってみよう
読むだけより、手を動かすほうがずっと早く身につきます。そろばんキングダムの 20〜16級は登録なしでずっと無料で、スマホでもパソコンでもすぐできます。
▶ そろばんキングダムをひらく